日本でも「パルクール」という言葉を聞くことは多くなってきました。
何となく飛んだり走ったりするのはわかるけど、どのようなものなのか詳しく知らないという方も多いはず…。
この記事ではパルクールとは何なのか?どこの国が発祥なのかといったパルクール文化の歴史や魅力、どうすればパルクールを始めることができるのかなど詳しく解説していきます。
イメージを膨らませたい方は、PTvillage管理人のテラが作成した下記の動画も併せてご覧ください。
目次
パルクールとは?
パルクールとは、走る・跳ぶ・登るといった移動動作を中心に自身の身体能力を高めるトレーニングカルチャーです。
重きを置かれるのが”運動動作である”ことでトレーニングです。それ以外にも、スポーツ、アート、パフォーマンス、ライフスタイルなど様々な捉え方がされています。
昨今では競技スポーツとしても捉えられることが増えてきました。
パルクールを実践している人はよくパルクーラーと間違えられますが、正しくは「トレーサー」と呼びます。
トレーサーの多くは、パルクールを通じて自己の体力やバランス力、俊敏性、空間認識能力など様々な能力を養うことを目的に実践しています。
また、危険に挑むのがパルクールということはなく、自身の身体能力の中でできることを行うことが本来のパルクールなのです。
パルクールの実践者の多くは、パルクールにおける移動の動作の練習を通じて己の機能性、体力、バランス、空間認識力、敏捷性、コーディネーション能力、正確さ、コントロール、創造的視点などを鍛えていきます。
(中略)
パルクールの実践を続けていくことで、実践者はどのような環境においても自由に、かつ機能的に動くことのできる心身を得ることができます。
パルクールの魅力
パルクールを行うことで身体能力の向上が見込めるのは前述の通りですが、これ以外にもたくさんのパルクールの魅力が存在します。
自身の身体能力を把握!限界を超えていく楽しさ!
パルクールでは走る・跳ぶ・登るといった動作をもとに、様々な体の動かし方をします。
これらの動作を行う際に、どのタイミングでどのように体を動かすか考える必要があり、自分で考えている動きと実際に行う動きがマッチした瞬間に達成感や喜びが生まれます。
また、その中で自分の身体能力がどれくらいかを把握することができる楽しさがあります。
後ほど解説しますが、危険なチャレンジはパルクールでは良しとされません。
いかに自分の身体能力でできることを実践していくかが重要で、自身の能力を把握して、巧みに体を操ることがパルクールの魅力と言えるでしょう。
また、最初は上手くできなくても、練習を重ねることでできなかったことができるようになっていきます。
それはまさに身体能力の向上。自分の中の限界値を伸ばしていくことで、できることが増えていきます。
何歳でも楽しめる生涯スポーツ的な要素
パルクールは若い人しかできないものだと思っていませんか?
そんなことは全くありません。海外では年配の方でパルクールに取り組んでいる人もいます。前述した通り、パルクールは自分の能力の中で行うものなので、何歳からでも行うことができるのです。
筆者の体験として、以前パルクールの大会に参加したのですが、その大会ではスタートからゴールまでのタイムを競うスピードランが開催されました。
そこに親子揃って出場している姿が印象的でした。パルクールは年齢関係なく、親子でも楽しめる文化だと感じ、そこが大きな魅力なのだと実感しました。
いつでもどこでもパルクールスポットに!
パルクールはいつでもどこでも実践可能です。以下の動画をご覧ください。
これはパルクール界の第一線で活躍しているアスリートZEN選手の動画です。ZEN選手が動画で述べているように、日常がパルクールになりうるのです。
練習施設や公園はもちろん、いつも見ている街でも、見方を変えればパルクールのスポットになります。
パルクールは身の回りの全てのものがオブスタクル(障害物)となるのです。
トレーサーは周囲の環境全てがフィールドなので、想像力が刺激されて「ここではこんな動きができそうだなぁ…」とクリエイティブに活動できることもパルクールの良さなのです。
※ただし、法令を守ってパルクールを実践することが重要です。
派手でかっこいいアクション!美しい映像!
”かっこよさ”や”派手さ”、”凄さ”をパルクールの一番の魅力だと語る方も多いことでしょう。
回転して駆け回る姿や狙った位置にピタッと着地する姿など、それはまさにアニメや映画の世界でしか見ないような身のこなしです。
パルクールと言えば、”ビル屋上などを駆け回る姿”などを想像する方も多いでしょう。「え!そんなことができるの!?」と自分には到底できないようなパフォーマンスを行う人を見ると驚きを覚えたり、尊敬の念が生まれることでしょう。映像で見ていてもハラハラ、ドキドキする感じが伝わってきます。
「ビルの上を駈ける」と聞くと危険だと感じる方もいるかもしれません。しかし、パルクールは前提として、自分の身体能力の中でできる限界を突き詰めていくものです。自身の限界を見誤って行う危険な行為はもはやパルクールではないのです。
そこは絶対に間違えてはいけないところです。
その他にも、映画やミュージックビデオの中でパルクールが取り入れられることも多くなり、YouTubeでは世界各国のトレーサーが華麗で美しい映像を配信しています。見ているだけでも胸が高鳴る…それがパルクールの魅力です。
スポーツ競技としてのパルクール
もともとはパルクールは自己鍛錬として用いられ、他者と競い合う要素としては見られていませんでした。
しかし、近年ではパルクールはスポーツとして取り扱われることも多くなりました。
世界中でパルクールの大会が開かれ、日本も例外ではありません。新型コロナウィルスの影響で延期となってしまいましたが、世界最高峰のアーバンスポーツの大会「FISE WORLD SERIES HIROSHIMA 2020」は4月に広島で開催予定でした。
スポーツとしてのパルクールは、主にスピードランとフリースタイルの2つの部門で競われることが多いです。
スピードラン部門の特徴
スピードラン部門では、障害物を含む特定のコースをいかに早くゴールできるか競われるタイムアタック形式の競技です。
斜面や台、鉄棒など大会によってコースは変わります。自身の身体能力を極限まで活用して、最短でゴールを目指すといういかにもパルクールらしい競技と言えるでしょう。
フリースタイル部門の特徴
フリースタイル部門は、パルクールの動きを組み合わせて”フロー”と呼ばれる一連の演技を行い、審判員によって審査される得点で競う競技です。
得点は主に下記4つのポイントが指標になります。
- 流動性
- 創造性
- 技術性
- 危険減点
流動性は、一連の流れの中で行われているかが見られ、止まらないで実施できるかが鍵となります。
創造性は、自由に演技できる中でパルクールの動きをどう組み合わせていくかが見られます。
自分にしかできないオリジナルの動きを取り入れたり、他人が真似できないようなパルクール的な動きができるかどうかが重視されます。
技術性は、ミスなく自分の力をコントロールして正確に技ができるかが見られます。かつ、フローの中で正確に難易度の高い技ができると高得点が期待できます。
危険減点は、審判員が危険だと判断したものに対して減点されます。自身のできることを行うことがパルクールであり、無茶や無謀とは異なるのです。
パルクールの歴史
今でこそ名前が知られるようになったパルクールですが、発祥はどこで、どのようにして日本に持ち込まれた文化なのでしょうか。
ここからはパルクールの歴史について紐解いていきます。
パルクールの発祥
パルクールの発祥はフランスで、起源は軍事訓練から来ています。
第一次世界大戦、第二次世界大戦のために、歩く、走る、跳ぶ、這う、登る、バランスをとる、投げる、持ち上げる、自衛する、泳ぐという10種類の運動能力を高めるためのトレーニングメソッドとして行われていました。
そこから障害物コースをまわる形式の訓練に派生し、それが現在のパルクールの基盤となったのです。
パルクールが日本に持ち込まれた背景
「Parkour(パルクール)」という単語が確立されたのは1998年頃。リュック・ベンソン監督が2001年に公開した映画「YAMAKASHI」ではパルクールが題材とされ、その他にも様々な映画やドキュメンタリー作品で用いられました。
それを機にパルクールは全世界へと広がっていき、日本も例外ではありませんでした。
日本ではZEN選手(本名:島田 善)が2011年のパルクールの国際大会「Red Bull Art of Motion Yokohama」で5位入賞したことで、脚光を浴びました。
それ以降、ZEN選手はパルクールはスリルを求めた危険な遊びというイメージを払拭するため、大会のみならずMVやCMの出演、モデル活動などを行っています。
ZEN選手以外にも、monsterPKやURBAN UNIONなどプロのパルクールチームが活躍しています。
パルクールの歴史について切っては語れないのがパルクール集団「YAMAKASHI」です。
YAMAKASHIは映画の題材にもなり、パルクールの起源にも密接に関わっています。
YAMAKASHIについては下記のページをご覧ください。
参考:パルクールとは | 日本パルクール協会 | Japan Parkour Association
参考:パルクール – Wikipedia
初心者必見!パルクールの始め方
ここまで読んだあなたはきっとパルクールをやりたいと感じているのではないでしょうか。ここからは初心者でもパルクールを始める方法、パルクールのやり方について解説していきます。
どんな動きがあるのかを知ろう
まずは具体的にパルクールにはどのような動きがあるのか知ることから始めてみましょう。
PTvillageではパルクールの技図鑑を掲載しています。まずはこちらをご覧ください。
パルクールの動きはは、主に以下の6つのカテゴリに分かれます。それぞれどのような動き、技があるのかを確認しましょう。
- ヴォルト系
(障害物を手を使って飛び越える動作) - ジャンプ系
(ジャンプして移動する動作) - ウォール系
(壁を使った動作) - アセント系
(高所へ移動する動作) - ディセント系
(高所から下へ降りる動作) - 鉄棒系
(鉄棒などのバーを使った動作) - アクロバット系
(平地で行うアクロバティックな動作)
自分にできそうな動きを実践し、さらなる技に挑戦!
どのような技があるのか確認したら、自身にできそうな技を実践してみましょう。
技図鑑では実際の動作の見本ややり方、練習方法などを解説しているので参考にしてください。
思うように体を動かせるようになってきたら、様々な技に挑戦していくようにしましょう。
といっても、実際にどの技から始めればよいのか迷ってしまうことでしょう。
初心者におすすめの技やどのような順番で始めればよいかは以下の記事で解説しているので、こちらも合わせてご覧ください。
パルクールができる場所
独学で実践するのも良いですが、パルクールの技術のある人に指導を仰いだり、一緒に練習する仲間がいれば上達スピードも上がります。
また、最近では日本全国でパルクール教室も増えてきているので、教室に通うのも上達の近道です。
以下のページは日本のパルクール教室をまとめています。この中からあなたの近くの教室や練習施設に通ってみてはいかがでしょうか。
◆ 日本全国のパルクール教室
パルクールをやる上で知っておくべきマナー
パルクールを実践する上で最低限知っておくべきマナーが存在します。
パルクールというブランドを汚さないためにも、以下の点を意識して実践するようにしてください。
私有地や禁止されている場所ではやらない
人の家などの私有地で勝手にパルクールをしてはいけません。不法侵入にあたりますし、万が一、器物損壊してしまったら賠償責任も問われます。
海外の動画ではしばしば屋根の上から飛び移ったり、マンションの階段を上り下りしたりする動画が見られます。
これらは特別な許可なく行ってはいけません。
また、「パルクールをしてはいけない」とルールが定められている場所で実践することはやめましょう。
ゴミなどは持ち帰る
公園などでパルクールを行うこともあるでしょう。練習時に持ち込んだ飲食のゴミなどは必ず持ち帰るようにしましょう。
周囲の人に迷惑をかけない
練習施設や公園を利用しているのは自分だけではありません。周囲の人の動きをよく見て、安全に練習するようにしましょう。
特に公園などでは小さい子が遊んでいることもあります。
いきなり自分がジャンプしようとした先に飛び出してくる…ということも考えられます。周りをよく見て練習するようにしましょう。
無茶はしない
パルクールはあくまで自身の能力の中で行い、段階を踏んでレベルアップしていくものです。
自分の身の丈にあった技でなく、いきなりレベルの高い技に挑むと怪我をする恐れもあります。
怪我をすると自分自身が痛い思いをするのはもちろん、一緒にいる仲間、それを見ている周囲の人に恐怖を与えることもあるでしょう。
怪我はしないよう細心の注意を払って練習するようにしましょう。
パルクールのよくある質問
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Q1,パルクールとフリーランニングの違いは?
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A1,フリーランニングは本来とは異なる方向性のパルクールということで、少々異なります。本来のパルクールは軍事訓練から派生した移動手段的な意味合いでしたが、フリーランニングではフリップ(宙返り)やツイスト(ひねり)を加えた動きが取り入れられています。
レッドブルの公式HPでも違いについて明記されているので、こちらも参考にしてみてください。
(参考:フリーランニングとパルクールの違いを知る | レッドブル)
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Q2,パルクールはスポーツなの?
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A2,近年ではスポーツとして捉えられることも増えてきました。もともとは軍事訓練、自己鍛錬、トレーニングであるため、他のスポーツと全く同じように扱うことは難しいでしょう。パルクールは移動術であり、パフォーマンスであり、アートであり、ライフスタイルであり、スポーツでもあるのです。
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Q3,パルクールは危険なの?
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A3,危険と認識されがちですが、本来は危険なものではありません。パルクールは自身の身体能力の中で行われ、訓練によってその身体能力を高めて、自身の限界値を伸ばしてより高度な技を体得していくものです。つまり、身の丈にあっていないような技など、危険を冒すような動作を行うことはパルクールが目指しているものとは異なります。
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Q4,パルクールを始めるには?
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A4,まずはパルクールがどういうものか、どのような動作があるのかを知りましょう。その上で、自分でもできそうな技に挑戦し、そこからさらなる高みを目指しましょう。また、指導者に教えてもらったり、パルクール教室に通うなども有効です。
パルクールの理解を深め、正しく実践しよう!
ここまでパルクールとは何か、特徴や魅力、歴史や始め方などについて解説してきました。
パルクールは自己鍛錬であり、近年ではスポーツとしても取り扱われるアーバンスポーツなのです。
パルクールがどのようなものかイメージはあるものの、詳しくは知らないという方の参考になれば幸いです。
また、これを機にパルクールへの興味が深まり、実践したいという方が少しでも増えれば嬉しいです。
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