フランス発祥で障害物を跳び越すアーバンスポーツである”パルクール”。そんなパルクールがオリンピック種目になる日も近いとささやかれています。
2024年にパリで開催が予定されているオリンピックでは正式種目に検討されましたが、不採用となりました。とはいえ、世界的にもパルクールが盛り上がりを見せていることは間違いありません。
この記事では、パルクールのオリンピック種目化について、これまでの動きをまとめています。また、これからどのような動きをするのかについても考察していきます。
目次
これまでのパルクールのオリンピック種目化の動き
ここではパルクールがオリンピックの種目化の動きについてまとめています。
2017年2月:パルクールのオリンピック種目化が検討される
2017年2月21日~23日にかけて、スイスのローザンヌにて国際体操連盟(FIG)が理事会を開き、2024年のパリオリンピックにてパルクールを新種目として追加することが決定されました。
このときから、パルクールのオリンピック種目化の動きが始まりました。
国際体操連盟(FIG)は23日までスイスのローザンヌで理事会を開き、フランス発祥で障害物を飛び越えていくニュースポーツ「パルクール」を新たな種目として加えることを決めた。5月の評議員会(バクー)で承認を諮る。2024年夏季パラリンピックで障害者の体操の実施を目指す方針も確認した。
参考:【体操】パルクールが新種目に FIG理事会 渡辺守成会長「五輪での追加を目指す」 – 産経ニュース
2019年6月:パリオリンピックの新種目として4競技が追加
2019年6月25日にスイスのローザンヌで開催された国際オリンピック委員会(IOC)の総会にて、ブレイクダンス、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの4競技が種目として追加されました。※
このとき、パルクールについては特に発表などはありませんでした。
※ 24年パリ五輪、4競技追加を承認 ブレークダンスなど: 日本経済新聞
2020年12月7日:パルクールがパリオリンピックで不採用に決定
IOCは2020年12月7日の理事会で、2021年に延期された東京オリンピックで実施されるブレイクダンス、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの4競技がパリオリンピックで追加種目となることを正式に決定しました。
この理事会では、パルクール、スカッシュ、ビリヤード、チェスが不採用になったことも明らかにされています。※
※ パリ五輪、ブレイクダンス初採用 野球や空手は外れる – BBCニュース
これに対し、公益財団法人日本体操協会パルクール 委員会 委員長のZEN氏は次のようにコメントをしています。
『カルチャー』として長年親しまれてきたパルクールの『スポーツ』としての一面が世界的に確立され始めてから程なくして、4年後のパリ五輪種目化の可否にまで話が発展していることに、驚きを感じております。
この速度感はまさに、パルクールの持つ魅力と可能性に向けられた期待感の現れと受け止めております。日本体操協会パルクール委員会 としては急ぐことなく正しい歩幅で競技発展の道を歩み続け、オリンピックに採用される日に備えて選手の強化、体制作りに取り組んでいきます。
参考:2024年パリ・オリンピックでの「パルクール」発表に関して | Japan Parkour Commission
2021年12月9日:フランスオリンピックのお披露目式でパルクールが披露されることが決定
日経新聞によると、フランスオリンピックのお披露目式にてパルクールが披露されることが決定しました。
パルクールは正式な種目としては先行から外れてしまいましたが、オリンピックという大舞台で披露されることは、今後の種目化に向けて1歩前進したと考えられるでしょう。
体操競技のパルクールが24年パリ大会でオリンピック(五輪)に「デビュー」する。正式競技での採用は見送られたが、アーバンスポーツとして将来の五輪入りは有力。パルクール発祥のフランスが、スポーツとしてアピールの場となる。
参考:パルクールが五輪「デビュー」へ 正式採用見送りもパリで「お披露目式」 – スポーツ : 日刊スポーツ
本当にオリンピック種目になる?今後について大胆予測!
2024年のパリオリンピックではパルクールの種目化は見送られましたが、今後はどのような動きが見られるでしょうか?
様々な観点から予測してみました。
※これ以降の内容は筆者の見解を含みます。
オリンピックの種目化に必要なことは?
オリンピックの種目になるためにはIOCの厳しい選考をクリアする必要があります。選考は様々な条件があり、たくさんの議論を重ねて決定されます。下記は選考の一例になります。
- 最低2回は、世界大会、大陸選手権で実施されていること
- 種目の実施許可は4年前まで(延長はできない)
- 男性は最低50か国3大陸、女性は最低35か国3大陸で実施されていること
- しっかりと国際的に認知された種目であること
参考:東京オリンピックの新種目|選定基準と注目競技について紹介│HALF TIME Magazine
これらの条件やオリンピック憲章の記載をもとに選考に入ります。
パルクールは、追加種目として検討の土台に乗ったことからも、これらの条件はクリアしているのではないでしょうか。
若者の取り込みに注力しているオリンピック
IOCは若者を取り込みたいという考えが強くなってきているでしょう。ブレイクダンスやスケートボードなどのスポーツがオリンピック種目に追加されたことからも、その流れが強まってきていると言えます。
ブレイクダンスやスケートボードは”アーバンスポーツ”と呼ばれる都市型スポーツです。パルクールもこのアーバンスポーツに含まれるため、オリンピック種目として採用される可能性は十分にあると言えるでしょう。
パルクール業界の内部分裂がオリンピック種目化の命運を分ける?
パルクールには国際的な組織および国内組織が存在します。国際パルクール組織Parkour Earthや日本パルクール協会(JPA)はオリンピックの種目化について否定的な立ち場を取っています。
翻訳
パルクールアースは本日、IOCに書簡を発行し、オリンピックプログラムにパルクールを含めるためのFIGによる提出を拒否するよう理事会に要請しました。
引用:Olympic Games | Parkour Earth(英語)一度も公式な世界大会が開催されたことのないパルクールをオリンピック体操競技における1種別として提案することを各国のパルクール協会への事前の相談なく宣言しましたが、パルクールは独立したスポーツ(運動方法)ですので、体操競技とは一切関係がありません。
(中略)
日本パルクール協会はParkour UKおよび国際パルクール組織「Parkour Earth」の考えに賛同し、「パルクールは体操ではない」「パルクールは独立したスポーツである」と考えています。
引用:パルクールとは | 日本パルクール協会 | Japan Parkour Association
対して、2017年よりパルクールのオリンピックの種目化を目指し、委員会を立ち上げました国際体操連盟(FIG)及び日本体操協会パルクール委員会(JGA PKC)はオリンピックの種目化については肯定的な姿勢です。
第 2 号 パルクール委員会の新設について
・FIGは昨年 5 月の評議員会にて、若者に人気を得て、急速に発展している
アーバンスポーツの「パルクール」をIOCの要請もあり、FIG正式種目とし
て決定した。
・2024 パリ大会より、オリンピック種目に追加するための推進活動として
「2018FISE広島大会」を鋭意、4月6日から8日開催に向けて準備中。
引用:(公財)日本体操協会 平成29年度第2回評議委員会議事録
FIGのパルクール委員会の設立およびオリンピックの種目化については、既存のパルクール組織からパルクールを”敵対的買収”を行うとされ、広く批判がされているのも事実です。
直近の動きとしては、2020年12月にParkour EarthがFIGのパルクール委員会に対し、手紙による抗議文を送付しています。
参考:Parkour group urges IOC to reject its sport for 2024 Paris Olympics
パルクールのオリンピックの種目化は、これらの内部分裂が鍵を握るのではないでしょうか。体操競技や新体操、トランポリンなど裾野を広げるFIGの勢いにより種目化となるのか、それとも内部事情が固まるまでは種目化されないのか、など今後について予測するのは困難と言えるでしょう。
混沌を極めるパルクールのオリンピック種目化
パルクールのオリンピック種目化に関するこれまでの動向と、今後について解説しました。今後については、パルクール業界の内部分裂がどのような結果をもたらすのか予測することができないでしょう。
オリンピック種目化に関して肯定・否定の意見を持つことも良いですが、一番大切なのはこれらの流れや問題について理解することがトレーサーやパルクール関係者にとって重要なのは間違いないでしょう。
この記事があなたがパルクールのオリンピック種目化について考えるきっかけとなれば幸いです。